核―細胞質間輸送から捉えた老化メカニズムの解析

今本 尚子

開拓研究本部(CPR)
今本細胞核機能研究室
主任研究員

Imamoto

rouka Fig1真核生物では、核と細胞質の間で絶え間ない情報分子の交換が行われている。このプロセスを担う核ー細胞質間輸送は、細胞の様々な生命活動の基礎であり、分化・発生・老化・疾病などの高次の生命機能にも大きな影響を与える。本プロジェクトでは、老化のメカニズムを核―細胞質間輸送の視点で捉えていく。

Importin 輸送: ヒト細胞の中では、核と細胞質の間の情報交換は多様・多彩な核−細胞質間輸送経路で担われている。例えば、現在もっとも良く知られているImportinと呼ばれる輸送運搬体は大きなファミリーを形成しており、それらが分担しながら多様なタンパク質の核内外輸送を担う。輸送基質の違いと輸送量によって、それぞれの輸送経路が生体反応を様々に制御すると考えられる。我々は、Importinファミリーが構成するヒト細胞の核内輸送経路の輸送基質を効率的同定できる実験系を構築し、輸送経路と細胞プロセスを繋ぐことに成功した(Fig1)。本プロジェクトでは、若い細胞と老化細胞の中で働く輸送経路の違いを調べて、違いのある輸送経路で運ばれる輸送基質を同定する。同定した基質の機能が細胞老化の及ぼす影響を調べることで、Importin輸送がどのように老化に寄与するかを明らかにしていく。

Hikeshi輸送: 上記に述べたImportin輸送は、細胞が正常な状態では活発に働くが、熱などのストレスを受けると活性が低下する。私たちは、Importin輸送が低下するストレス時に、Hikeshiと名付けた運搬体が担う輸送が駆動することを見つけた。Hikeshiは分子シャペロンHsp70を核に運ぶことに特化した輸送運搬体で、Importinファミリーには属さないタンパク質である。Hikeshiは進化的に保存されたタンパク質で、その機能を損なうと、線虫の寿命が縮まり、MEF(mouse embryonic fibroblast)では細胞老化が促進される。これらの現象は、Hikeshiの機能を損なうと、これまで殆ど注目されていなかったHsp70の核内機能が失われるためであるからだと考えている。また、老化細胞では、若い細胞と同じレベルのHsp70とHikeshiタンパク質が発現するにも関わらず、Hsp70の核局在が誘引されず、Hikeshiが働かないことがわかってきた。Hikeshiが細胞老化に及ぼす影響を探るため、本プロジェクトでは、Hsp70の核内機能と、Hikeshi輸送が駆動するメカニズムを明らかにしていく。

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