老化の基盤となる代謝のケミカルバイオロジー

吉田 稔

環境資源科学研究センター(CSRS)
ケミカルゲノミクス研究グループ
グループディレクター

Yoshida

エネルギー代謝は老化の制御と深く関わっている。本研究は、老化に関連する制御因子を同定し、ケミカルバイオロジーを用いて新たな老化制御法を開拓することを目的とする。具体的には、老化と深く関わるミトコンドリアの生合成と呼吸活性制御、寿命因子として知られる脱アセチル化酵素Sirtuinを制御する内在性代謝物、細胞老化を制御する化合物の探索などに焦点を当てて研究を進める。

1)ミトコンドリアの生合成と呼吸活性制御

ミトコンドリアはエネルギー代謝の中核であると同時に酸化ストレスの源である活性酸素種を生み出すオルガネラとして老化に関与する。その生合成は主に転写レベルで制御されると考えられてきたが、我々は最近、酸素に応答したミトコンドリアタンパク質の翻訳制御機構の存在を見いだした。また、ミトコンドリアから生まれる活性酸素種がミトコンドリアDNA(mtDNA)組換え酵素がmtDNAの複製に関与することもわかってきた。そこで、それらの分子機構を解明するとともにミトコンドリア機能の人為的制御法を開発する。

2)内在性代謝物によるSirtuinの制御機構

カロリー制限で活性化する脱アセチル化酵素Sirtuinは、酵母から哺乳動物まで共通の寿命延長因子であることが知られており、その制御機構に興味が持たれている。我々はSIRT2のX線結晶構造解析からSIRT2が脱アセチル化酵素活性だけでなく、脱長鎖アシル化酵素活性も併せ持つことを見いだした。しかもその生成物であるO-acyl-ADP riboseが脱アセチル化酵素活性のみを強く阻害することが明らかになった。このことは、細胞内において代謝物による活性のスイッチ機構が存在する可能性を示唆している。本研究では老化における脱アセチル化、脱長鎖アシル化酵素活性の役割と制御機構を明らかにする。

3)老化細胞を特異的に除去する化合物の探索

加齢に伴い、生体内の様々な組織で細胞老化(senescence)となった細胞が蓄積する。このような老化細胞は、長く生存して炎症などの慢性疾患の原因となる。そのため、老化細胞の特異的除去(senolysis)は健康寿命の延伸につながることが期待されている。そこで英国CRUKのグループと共同して、senolysis誘導剤の探索を行う。

 

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