老化における細胞内シグナル伝達系の時空間動態解析

上田 昌宏

生命機能科学研究センター(BDR)
細胞シグナル動態研究チーム
チームリーダー

mail:masahiroueda(at)riken.jp
Ueda

イノシトールリン脂質は、細胞膜を構成する脂質の一種であり、そのリン酸化状態の量的変化と細胞内での局在制御を通して様々な生命現象におけるシグナル分子として機能する。細胞増殖・細胞運動・免疫応答などにおける環境情報の細胞内シグナル伝達や、受容体の取り込み・シナプス小胞による神経伝達・オートファジーなどの膜輸送において重要な役割を担っている。イノシトールリン脂質の代謝に働く酵素分子の多くが細胞のがん化や遺伝病に関連しており、この代謝系の恒常的な働きが細胞を正常な状態に保つのに重要と考えられている。老化に伴う細胞増殖能の低下、あるいは逆に異常な細胞増殖によるがん化の過程では、イノシトールリン脂質代謝系の時空間動態に何らかの異常が起こる事が予想される。従って、この代謝系の動態を検出・解析する手法を開発し、老化に伴う動態変化や活性酸素の影響を明らかにすることは、老化の分子メカニズムの解明に向けて重要な課題である。

これまでの研究から、イノシトールリン脂質代謝系は細胞内において時間的・空間的に自己組織化され、ダイナミックに変化しつつ恒常性を保つ仕組みを持つ可能性が示唆されてきた(図1)。そこで本研究では、我々が開発してきた1分子レベルから多細胞体レベルに至る多階層のライブイメージング解析法をイノシトールリン脂質代謝系に適用し,その時空間動態の解明と細胞老化の影響を明らかにすることを目指す。1分子顕微鏡、超解像顕微鏡、共焦点顕微鏡などによるライブイメージング解析法の自動化を進め、解析手法の汎用性を高める(図2)。また、プロジェクト内の他の研究グループと連携して、老化過程における細胞内分子反応ネットワークの時空間動態を定量計測・解析する手法の開発を進め、分子メカニズムの解明を目指す。

図1. イノシトールリン脂質代謝系の自己組織化のライブイメージング。(赤)がん抑制遺伝子産物PTEN、(緑)イノシトールリン脂質PIP3

図2. 顕微鏡計測の自動化システム(AiSIS)

 

 

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